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血便と下血(げけつ)は体の異常のサイン~おしりからの出血は要注意!~

公開日:2020年4月20日

更新日:2021年1月19日

お尻をふいたとき、トイレットペーパーに血がついたことは誰でもあると思います。

血の量が少ないと、病院に行かないかたがほとんどではないでしょうか。

ただ、

・便をしたあと便器が血で真っ赤になった

・便が黒くて心配に

・下痢気味で血もでる

・便をするときに血がぽたぽたたれる

・お腹が痛くて下痢や血もでる

・いきむと便はでないのに血がでる

・便をするときに血と一緒にネバネバした粘液がでる

このようになるとかなり心配になりますよね。

これらの症状を、

「おしりからの出血だから、おそらく痔だろう」

「病気が見つかったら嫌だから来ませんでした...」

と思って放置するのは大変危険です.

大腸がんなど命にかかわる重い病気を見逃すこととなるからです。

この記事を書いた私の名前は金澤周(かなざわ あまね)です。

埼玉県の草加(そうか)市にある、「草加西口大腸肛門クリニック」の院長です。

また、胃腸と肛門の専門医であり指導医でもあります。

いままで血便や下血(げけつ)で悩む患者さんを10,000人以上診察してきました。

その経験をもとにこの記事では

・血便や下血の原因

・血便や下血の治療法

・血便や下血で悩む患者さんからよくある質問

これらについて詳しく説明しています。

この記事を読むだけで血便や下血に対する悩みや対処法がわかります。

血便や下血(げけつ)とは

血便と下血はどちらとも肛門から血がでることをいいます。

ただ、血の色に違いがあります。

血便と下血(げけつ)との違い

血便は便に鮮血が混ざっていて赤色の状態。

下血は古い血が混ざることにより便が黒くなっている状態です。

出血してから時間がたつにつれ、便に混ざる血液は赤色から黒色に変化します。

そのため、血がでているところが肛門に近いほど血液は赤く遠いほど黒くなります。

胃や十二指腸など肛門から遠いところからの出血ほど便の色は黒くなります。

血便や下血(げけつ)の原因

例えば、

おしりから血便や下血があったとき、私たち肛門科医が考える病気は以下のものがあります。

・お尻から出てきたり、痛みがあったりする痔

・腸がとびだす脱腸

・腸に炎症が起こる腸炎

・胃腸からの出血

・命にかかわる大腸がん

大きく5つのものがあります。(病気の詳しい説明は後に詳しく述べています)

よくある患者さんの経過は以下の通りです。

①「数年前からおしりからの出血があったが痔と思って放置」

②「数ヶ月前から便が出にくくなり,最近は下痢・血便・下血になってきた」

③「不安になり病院に行き大腸内視鏡検査で大腸に進行癌が見つかる」

といったケースです。

大腸がんは命にかかわります。

そのため、おしりから血がでるときは肛門科受診をおすすめします。

血便と下血の診察の流れ

血便や下血などで肛門科を受診したときの診察手順は以下のとおりです.

①問診

患者様の症状やこれまでの経過をお伺いします.

②肛門診察

肛門の近くに出血の原因となる病気がないかを診察します。

指や肛門鏡という専門の器具を使って診察をします(後ほど詳しくお話します)

③診断の決定

考えられる診断名をお伝えします.

④痔が原因と考えられる場合

軟膏や飲み薬による治療を提案し、1~2週間後に再受診をしていただきます。

⑤胃腸からの出血の可能性がある場合

大腸内視鏡検査をおすすめします。

胃や十二指腸などから血が出ている可能性がある場合、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)をおすすめします。

※④での再受診のとき血便・下血が続いていた場合は大腸内視鏡検査をおすすめしています。

血便の恥ずかしくない診察

「おしりの診察は恥ずかしいからなかなか来られなくて...」

「どういうふうに診察をするのかがわからないので不安で...」

といった声が聞かれます.

そこで、草加大腸肛門クリニックでは患者さんが恥ずかしくないようプライバシーに配慮した診察を心がけております。

診察の手順は以下のとおりです。

①カーテンの中で,ズボンや下着をおしりが見えるくらいまで下ろしていただき診察台に横になっていただきます.

②おしりに,シートをかけさせていただきます.これで,診察の準備が完了です.

③視診察(見て観察)をします.

④指診察(指で診察)をします.

⑤肛門鏡(痔の様子などを詳しく観察できる特殊な器械)で診察をします.

⑥診察が終わりましたらカーテンの中でゆっくりお着替えをしていただきます.

以上の流れで診察をさせていただきます.

女性の場合には診察の間すぐそばに女性スタッフがいます。

安心して診察を受けていただけます。

血便や下血での大腸内視鏡検査

おしりの診察の後に大腸からの出血が疑わしい場合は大腸内視鏡検査をおすすめします。

先に述べたように血便・下血は大腸がんのサインである可能性もあり、命にかかわる病気を知らせる体の悲鳴です。

そのため、大腸内視鏡検査を行い血便・下血の原因を特定します。

当クリニックの大腸内視鏡検査は、痛みや恥ずかしさはほとんどありません。

まず、当クリニックでは下のように最新の内視鏡を取り入れています。

カメラを入れるときの痛みをより減らす「炭酸ガスシステム」も入れています。

また、私をはじめ当クリニックのドクターはいままで10,000~20,000例以上の大腸内視鏡検査をしてきました。

痛みがでないテクニックを体得しています。

患者さんからもよく、

「寝てたら終わった」

「こんなスムーズに終わるなら早めに受けておけばよかった」

など、嬉しい言葉をたくさんいただきます。

また、大腸カメラをするときの体勢は以下のイラストの通りです。

お尻が少しだけ見える検査着をきていただいて、横向きになるだけです。

恥ずかしさもないと言えます。

「恥ずかしくて無理」

など言われる患者さんもいままでいたことがありません。

このように、痛みがなく安心して受けれる検査を当クリニックでは行っています。

検査自体も20~30分で終わります。

以下に、検査の予約から検査終了までの流れ簡単にまとめてみました。

参考にしてください。

血便や下血の考えられる病気

先ほど、血便や下血では大きく分けて5つの病気が考えられると述べました。

ここではより細かく説明するため12コに分けました。

われわれ胃腸や肛門の医師が考える血便・下血の原因の病気は以下です。

①大腸癌

おしりからの出血で最も注意をしなければならないのは大腸がんです.

私はこれまで大腸肛門外科医として多くの大腸がんの患者さんの診療に関わってきました。

冒頭でも述べましたがよくある経過として,

・数年前からおしりからの出血があったが痔と思って放置

・数ヶ月前から便が出にくくなり最近は下痢になってきた

・病院に行き,大腸内視鏡検査で大腸に進行癌が見つかる

といったケースです.

大腸がんも初期の場合は目に見える血便や下血はおこりません。

血便や下血が自覚できるようになった段階では病状が進んでいることが多いです。

そのため、目に見えない出血を調べることが必要です。

目に見えない出血を調べるには、あとに詳しく説明する便潜血検査(べんせんけつけんさ)が重要となります。

便潜血検査は2日間の便を採取します。

1日でも陽性になった場合には必ず大腸内視鏡検査を受けましょう.

非常に早期の癌であれば大腸内視鏡で治療が完了します。

ただ、ある程度まで進行していた場合は外科的手術が必要です。

大腸以外の臓器(肝臓や肺など)に癌が拡がっていると手術だけで治すことはできません。

抗がん剤による治療が必要となってきます。

大腸がんに限らずどの病気にも言えることですがまずは病気の予防が一番大切です。

その次には病気の早期発見・早期治療が重要となってきます

血便や下血をはじめなにか異常を感じた時は怖がらず恥ずかしがらず肛門科を受診してみてください。

②痔核(いぼ痔)

肛門の一部に血がたまり、こぶのようになります。

もっとも多いタイプの痔です。

血が出たり、肛門の一部が飛び出してきたりします。

歯状線(肛門の縁から2cmほど内側にある)の内側から発生する内痔核と外側から発生する外痔核があります。

内痔核は通常痛みがありません。

外痔核は血栓(血のかたまり)を伴うと痛みが出ます。

診断は、肛門診察で行います。

痔核の脱出の程度は,1〜4度に分けられます。

脱出の程度 その内容
1度 便をだす時にほとんど脱出しない
2度 便をだすときに脱出するが自然にもどる
3度 便を出すときに脱出して指で押さないともどらない
4度 便をだすとき以外でも常に脱出している

軟膏による治療が基本となります。

ただ、脱出の程度が3度以上の場合は手術も検討されます.

③裂肛(切れ痔)

硬い便によって肛門付近が切れたり裂けたりする状態です。

血はトイレットペーパーに付着する程度の少量です。

ただ、激しい痛みを伴うため排便を我慢して症状を悪くさせてしまうことがあります.

診断は肛門診察で行います。

治療の基本は便を硬くしない排便コントロールと軟膏による治療です。

1−2ヶ月排便コントロールや軟膏による治療をしても痛みなどの症状が良くならない場合は手術も検討します。

④痔瘻(じろう)別名:肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)

痔瘻は肛門内からその周囲にトンネル状の管(瘻管)ができる病気です。

肛門周囲膿瘍が悪くなるとこのトンネルができます。

肛門の周りが細菌により炎症をおこし膿(うみ)がたまる状態です。

・発熱

・肛門周囲の痛み

・膿が出る

これらがこの病気の特徴です。

診断は肛門診察と肛門エコーで行います。

放置しておくと敗血症といった命に関わる病気になることもあります。

そのため、緊急にたまった膿を出す処置が必要となります。

また、重症の場合は軟膏などの治療では治りません。

急ぎではありませんがしっかりと治すためには手術が必要となります.

⑤直腸脱

直腸が肛門から筒状に飛び出してくる状態です。

肛門の筋肉が弱くなった高齢者に起こることが多いす。

血やべたべたした粘液が出たりします。

最初のうちは手で戻すと戻ります。

ただ、そのうち戻らなくなります。

直腸脱は軟膏などの治療では治らないため,しっかりと治すためには手術が必要となります。

⑥感染性腸炎

細菌やウイルスが腸へ感染し

・お尻からの出血

・下痢

・腹痛

・嘔吐

・発熱

などがおこります。

1〜2週間でよくなることが多いです。

ただ、細菌やウイルスの種類によって腸管出血性大腸菌(O-157)といった命にかかわるものもあるため注意が必要です。

⑦虚血性腸炎(きょけつせいちょうえん)

大腸の血の流れが悪くなることによって起こります.

夜にお腹の左側が痛み、そのあとに下痢をして血がでるパターンが一般的です.

多くは食事制限などで腸を安静に保つことで良くなります。

ただ、痛み・下痢・血便などの症状が強い場合は入院して点滴治療が必要となることもあります.

⑧薬剤性腸炎

鎮痛剤や抗生物質を使うことにより腸の炎症を起こす場合があります。

血便・下血の起こる前に薬剤の使用があるかがポイントとなります。

⑨大腸憩室出血(だいちょけいしつしゅっけつ)

大腸の弱い部分がぶどうの房のように外に膨れてしまうことを憩室(けいしつ)と言います。

その憩室から大量出血をすることがあります。

お腹の痛みは無く、突然の出血が起こる病気です。

診断は大腸内視鏡検査で出血した憩室を見つけたり、造影剤を使ったCTで出血している憩室を見つけたりします.

自然に血が止まるときもあります。

ただ、出血が止まらないときは大腸内視鏡で出血している場所をクリップという器具で止めて止血をします。

また、カテーテル治療で出血の原因となる血管を詰めて止血をします。

⑩潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)

大腸に炎症をおこし、

・下痢

・血便

・下血

・粘血便

・腹痛

・体重減少

などの症状を起こします。

厚生労働省により難病に指定されています。

しっかりと治すことのできる治療法は見つかっていません。

潰瘍性大腸炎の患者さんは全国で約16万人です(2016年)。

20〜30歳の方に多いです。

ただ、小児や50歳以上の年齢層での発症もまれではありません。

経過としては、

・腸の炎症がおこり症状が強くなる「活動期」

・症状がおさまっている「寛解期(かんかいき)」

これらがあります。

症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です.

診断は、下痢や出血を起こす他の腸炎と区別することが必要です。

その後に大腸内視鏡検査により炎症の範囲や程度を調べ、大腸粘膜の一部を採取する生検検査(せいけんけんさ)を行います。

それらの結果を総合的に判断して診断を確定します。

先ほど述べたように、潰瘍性大腸炎をしっかりと治すことのできる治療法は見つかっていません。

そのため、薬により大腸の炎症を抑えて症状がおさまっている「寛解期」を続けていくのが治療の基本となります。

薬は飲み薬からスタートします。

飲み薬が効かない場合には点滴治療などを行います。

それらの治療でも症状が良くならない場合は、大腸をすべて取る手術(大腸全摘術)が検討されます。

⑪クローン病

クローン病は主として若年者にみられます。

口の中にはじまり肛門にいたるまでの消化管(口・食道・胃・小腸・大腸・肛門)のどの部位にも炎症が起こりえる病気です。

そのなかでも、主に小腸と大腸を中心として炎症がおこります。

・腹痛

・下痢

・血便

・体重減少

などの症状をおこします。

潰瘍性大腸炎と同じく厚生労働省により難病に指定されています。

しっかりと治すことのできる治療法は見つかっていません。

クローン病の患者さんは全国で約4万人(2016年)です。

診断は、

・大腸内視鏡検査

・内視鏡検査の際に腸の粘膜の一部を採取する生検検査

・バリウムによる小腸の造影検査

・肛門に病変があるかどうかの診察

などを行いそれらの結果を総合的に判断して診断を確定します.

先ほど述べたようにクローン病をしっかりと治すことのできる治療法は見つかっていません。

そのため、薬による治療や腸に刺激を加えないようにする栄養剤による栄養療法になります。

腸の炎症が強く小腸や大腸が狭くなって食事ができなくなったり、腸に穴が空いてしまったりした場合には外科手術が必要となります.

⑫胃や十二指腸や小腸からの出血

おしりから遠い、

・胃

・十二指腸

・小腸

からの出血をするとタール便と呼ばれる黒い出血(下血)がおこります。

これらの場所から血が出る病気として、潰瘍や癌などの腫瘍によるものの可能性があります。

診断は、胃内視鏡検査を行います。

小腸からの出血の可能性がある場合はカプセル内視鏡検査や小腸専用の内視鏡検査を行います.

血便や下血における大腸がんはかなり危険

述べてきたように、血便や下血があるとこのような病気が考えられます。

そのなかでも、大腸がんをピックアップしてお伝えします。

・血便や下血の患者さんから大腸がんについての質問がかなり多い

・大腸がんの初期症状が血便や下血

・大腸がんは命にかかわる

これらの理由から注意喚起をしたいからです。

血便での大腸がんにおける進行度(ステージ)

 大腸がんになった方から、

「あとどれくらい生きることができますか」

と質問をされることがあります.

 大腸がんにかかった方の生存率(あとどれくらい生きることができるのか)は、進行度(ステージ)によって変わってきます。

大腸がんの進行度(ステージ)は、

①深達度(癌が大腸の壁をどれくらい深くまで進んでいるか)

②リンパ節転移(癌が大腸の外にあるリンパ節という臓器に広がっているか)

③遠隔転移(癌が肺や肝臓といった遠くの臓器まで広がっているか)

という3つのポイントにより決まってきます。

ステージ 癌の広がり具合 主な治療法
1 粘膜内にとどまる 内視鏡治療
2 筋肉の層にとどまる 手術±抗がん剤
3 リンパ節に広がっている 手術+抗がん剤
4 遠くの臓器に広がっている 抗がん剤±手術±放射線

ステージによって治療方法も変わってきます。

ステージ0とステージ1の一部では内視鏡治療によりほぼ癌を治すことが可能です。

それ以上になると手術が必要となります。

治療に要する時間的・社会的・経済的負担も大きくなっていきます。

ステージ3からは手術後の抗がん剤治療も必要となります。

抗がん剤の副作用はかなり辛く厳しいものです。

ステージ4になると治療の中心は抗がん剤治療となります。

治療のため、定期的に通院が必要となるとともに病気を完治させることは難しくなってきます.

ステージによって5年生存率(5年間生きることのできる割合)も変わってきます。

大腸癌研究会の統計によると、ステージごとの5年生存率は以下のようになっています。

ステージ3aと3bは、リンパ節転移の個数の違いがあります。

3bがよりリンパ節転移が多く病状が進んだ状態です。

ステージ 5年生存率
0 94.0%
1 91.6%
2 84.8%
3a 77.7%
3b 60.0%
4 18.8%

ステージ1の一部までは内視鏡で治療ができ、5年生存率も90%以上となります。

ただ、ステージ3になると5年生存率も80%以下となります。

ステージ4では5人に1人しか5年間生きることができません。

このようにステージが低ければ低いほど5年生存率は高いです。

そのため、大腸癌の早期発見・早期治療はかなり重要になってきます。

大腸癌は数ある癌のなかでも、早期発見・早期治療ができる癌です。

毎年検診で便潜血検査を受け、1回でも陽性担った場合には,必ず精密検査である大腸カメラを受けてください。

血便での大腸がん症例

これまで、胃腸やお尻の専門医として多くの血便に悩む患者さんの治療に携わってきました。

そのなかで印象的な方の経緯が以下の通りです。

①数年前から会社の検診で便潜血陽性を指摘されていた

②仕事が忙しく、また自分に限っては大丈夫だろうという根拠のない自信があった

③そのため、精密検査である大腸カメラを受けなかった

④そのうち目に見える出血が時々するようになる

⑤家族から病院の受診を勧められても痔からの出血だろうと考え病院に行かなかった

⑥最終的に排便のたびに出血。下痢や便秘なども伴うようになりさすがにまずいと感じて病院を受診する

このような患者さんでした。

これは命にかかわる大変危険な状態です。

ここまで病状がすすんでいると、大腸カメラをしてみると進行癌があることがほとんどです。

そうなると、すでに内視鏡治療はできない状態で手術が必ずいります。

総合病院を紹介受診となるパターンになります。

総合病院でも進行度(ステージ)を決めるためのCT検査などいくつもの検査が必要となります。

ステージ3までであれば完治できる可能性はあります。

ただ、ステージ4の場合には5年生存率は20%です。

5年間生存できる人は5人に1人です。

ステージが進むほど治療にかかる時間的負担も大きくなります。

休職や仕事を辞めざるをえない方もでてきます.

また、治療期間が長くなればなるほど身体的負担や経済的負担も大きくなります。

本人だけでなく家族にも影響を与えてしまいます。

冒頭の患者さんの場合も、初回の便潜血陽性の段階で大腸カメラを受けていれば内視鏡治療で完治できた可能性もあります。

また、ご家族から病院受診を勧められた段階で受診をしていれば手術だけで完治できた可能性が高いです。

そうすれば抗がん剤治療は必要ありません。

大腸癌は数ある癌のなかでも、早期発見・早期治療ができる癌です.

毎年検診で便潜血検査を受け1回でも陽性担った場合には、必ず精密検査である大腸カメラを受けてください。

40歳を超えてくると大腸癌の可能性は増えてきます. 

・自分と大切な人を守るため

・手遅れにならなたいため

みなさん1人1人が他人事だと思わず便潜血検査や大腸内視鏡検査を受けてください。

そして、どんな小さなことでもかまいません。

相談があればクリニックにお越しください。

血便や下血で悩む患者さんからのよくある質問

最後に、私が診療をしていて血便に悩む患者さんからよく聞かれる質問をまとめてみました。

Q下血や血便がどのくらい続いたら病院を受診すれば良いでしょうか?

A. これは非常に難しい質問です.

紙にほんの少しだけかすれるような血がつくのは痔など肛門の病気の可能性が高いです。

・血が紙にべったりついたり、便器が真っ赤になるなど量が多い

・血が暗い感じの赤色

これらは大腸の病気の可能性が高いです。

命にかかわる可能性もあるため早めに肛門科受診をお勧めします

Qおしりの診察をする器械の肛門鏡(こうもんきょう)とはどのようなものですか?

A. 肛門鏡は金属で作られているおしりの診察専用の器械です。

当クリニックでは、写真の様なストランゲ型と呼ばれる2枚の貝を合わせた様な形のものを使用しています.

他には筒の形をしたものもあります.

診察の時には肛門鏡の先端にゼリーをつけます。

ゼリーをつけ滑りがよくなったら肛門鏡をゆっくりと入れます。

2−3回に分けて肛門鏡を広げながら痔の様子を観察します.

痛みが強いときには無理はしません。

痛みがある場合には小さな小児用の肛門鏡で観察をします.

Qおしりの診察のときにズボンやスカートや下着は全部脱がなくてもいいのですか?

A. ズボンやスカートや下着は全部脱ぐ必要はありません.

肛門部とその周囲が観察できれば十分です。

そのため、おしりが見える範囲でズボンやスカートや下着を下ろしていただくので大丈夫です。

また、先にも述べましたが当クリニックでは診察の時に女性スタッフも一緒にいます。

女性でも安心して診察を受けていただけるように配慮しています。

Qおしりの診察は痛くはないですか?

A. おしりの診察は、

・目で見る診察

・指での診察

・肛門鏡を使っての診察

これら3段階で行います.

指や肛門鏡を肛門に入れるときに、痛み止めのゼリーを使って痛みがないよう工夫をしています.

それでも痛みがあるときには遠慮せずおっしゃってください.

痛みの様子をおうかかがいしながら可能な範囲での診察をさせていただきます。

Q便潜血検査とはどんな検査ですか?

A.

便潜血検査は、

「大腸からの目に見えない出血があるのかどうか」

を調べるための検査です。

・自治体の大腸がん検診

・会社の健康診断

などで、大腸がんの検査として広く行われています.

便を1日1回2日に分けてとる「便潜血2日法」がほとんどです。

便潜血検査のメリットは検査費用が安いことです。

自治体の大腸がん検診の場合、当クリニックがある埼玉県草加市と越谷市は500円、東京都足立区は300円となっています.

また、便を取るだけなので体への負担もありません。

陽性がでたら、精密検査として大腸内視鏡検査を受けてください。

日本対がん協会が2017年度に全国で行った便潜血検査のデータがあります。

・10,000人中、607人が陽性と判定

・その中で、すすめられている大腸内視鏡検査を受けた人は417人

・417人の中から17人に大腸がんが発見された

このようなデータになっています。

大腸がん検診は大腸がんを見つけるためのものです。

ただ、それ以外にも大腸ポリープ(良性腫瘍)を発見して治療に結びつけることができます。

しかし、便潜血検査は100%確実ではありません。

検査が陽性であっても大腸がんかどうか確定できません。

陰性であっても大腸がんがないとも言い切れません。

確実性がないことが便潜血検査のデメリットと言えます。

そのため、血便や下血で悩む患者さんには大腸内視鏡検査をおすすめしています。

最後のまとめ

ここまで,記事を読んでいただきありがとうございました.

おしりからの出血は要注意で

『血便・下血は体の異常のサイン』

ということがおわかりいただけましたでしょうか.

血便・下血の際には,なるべく早めに肛門科を受診してみてください.

この記事が

・皆様の健康と病気の早期発見

・肛門科を受診する際の不安の軽減

これらのためにお役に立てれば幸いです.

草加大腸肛門クリニック院長 金澤周(かなざわあまね)

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