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大腸がんを防げる便潜血検査の重要性を専門医が徹底解説

公開日:2020年7月29日

更新日:2020年8月1日

「自分はいたって健康!」

「快食・快便!」

「何も症状がないから検診は不要!」

と思っている方はいませんか。

ただ、注意してください。

大腸がんは症状がほとんど出ないのが特徴です。

そして、症状がでたときにはもう手遅れになるケースも多くあります。

そのため、大腸がん検診は早い段階で見つけなくてはいけません。

また、大腸がんは早期であればほとんど治ります。

さらに治療による身体的負担、経済的負担も少なくてすみます。

これらのために効果的なものが「便潜血検査」です。

この記事を書いた私は小泉岐博(こいずみみちひろ)です。

お腹とお尻の専門医であり指導医でもあります。

東京都足立区(あだちく)にある西新井(にしあらい)大腸肛門科で日々、患者さんのため頑張ってます。

ここのページでは大腸がん検診で効果的な「便潜血検査」について解説します。

大腸がん検診は40歳から

大腸がん検診は何歳から受けるべきでしょうか。

ずばり40歳です。

上のイラストのように40歳を超えると大腸がんにかかる方が増えはじめます。

そして年齢が高くなるほどその頻度は高くなります。

また、40歳は仕事・家族で責任ある人が多くなってきます。

大腸がんになれば自分がものすごく苦しいのはもちろん、精神的・経済的にも周りの人に大きな負担をかけてしまいます。

そのため、40歳以上が自治体で行う大腸がん検診の対象となっています。

40歳になったら大腸がん検診を受けましょう。

便潜血検査で大腸がんの可能性のある人を見つける

大腸がんがあると、大腸の中を便が通過するときに、癌の表面とこすれて便に血が付きます。

この便についた血液をとるのが便潜血検査です。

下の写真が便潜血検査キットです。

綿棒のようなスティックで便の表面をこするようにして便を採取します。

体への負担がかからない便利な検査法です

便潜血で陽性だと、

「便の中に血液が混ざっている状態」

ということで、大腸がんの可能性があると判定されます。

便潜血検査では1日に1回ずつ2日に分けて便を採取します。

1回よりも2回採取したほうががんの見逃しが少ないからです。

したがって、2回のうち1回でも便に血液が混ざれば陽性とします。

便潜血検査の間隔は年1回

便潜血検査は毎年行います。

大腸がんが小さければ出血しないことがあるからです。

早期の大腸癌で便潜血が陽性になるのは50%程度です。

もし、この時点で見つけることができなくとも翌年に検診をうければ見つかる可能性が高いです。

そうすれば極端に進行する前にがんを治療することができます。

だから便潜血検査は年1回受けることをおすすめします。

 便潜血検査で陽性がでたら大腸内視鏡検査

便潜血検査で陽性になり真っ青になって病院に来る方がいます。

ただ、便潜血陽性=大腸がんではありません。

大腸がんの他にも良性ポリープ・腸炎・痔核など血がでるもととなる病気があるからです。

便潜血が陽性のかたは本当にがんがあるかどうかを調べるために大腸内視鏡による精密検査が必要です。

大腸内視鏡検査は、胃カメラと同じように内視鏡を肛門から挿入して大腸の中を直接見る検査です。

昔からある、注腸X線検査(バリウム検査)に比べ、内視鏡検査はリアルタイムに病気などを見れます。

ポリープや癌を疑うような病変があれば、病変の組織を一部採取(生検)して精密な診断もできます。

便潜血陽性となってもがんと診断される人はごく一部です。

便潜血検査を受けた方の約7%が陽性となり、その中の2%にがんが見つかるとされています。

つまり、計算上は500人検査すると35人が便潜血陽性となって、その中で1人にがんが見つかる計算になります。

苦痛のない大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査は

・多量の下剤を飲まねばならない

・肛門にカメラを入れる痛みや恐怖

これらイメージがあります。

ただ、最近はかなり改善されています。

私がする施術でも「痛くなかった」「これなら早めにうけておけばよかった」など嬉しい言葉もいただきます。

検査前には1~2Lの内視鏡専用の下剤を飲んで便を出します。

かつての下剤はまずくて飲みにくいと不評でした。

今は柑橘系や風味のものがあり、以前に比べてだいぶ飲みやすくなっています。

当院では検査の苦痛を和らげるために鎮静剤を注射します。

注射もかなり細い針なのでチクりと少しするだけです。

検査中、意識はありますがウトウトした状態で、声かけには応じるが苦痛はほとんど感じない程度です。

通常は内視鏡から空気を入れて腸を膨らませて腸の中を観察します。

ただ、当院では空気の代わりに二酸化炭素を使用します。

下の写真が二酸化炭素ガスシステムです。

通常の空気に比べ、お腹の張りは早く取れ不快感が少ないです。

また、滅菌もしっかりしてますので感染リスク対策もばっちりです。

下の写真は当院にある滅菌システムです。

検査自体は病気がなければ15分から20分程度で終わります。

下のイラストは当院で導入してる内視鏡機器や検査の流れのイラストです。

ぜひ参考にしてください。

便潜血検査陽性ならば大腸内視鏡検査を必ずうけてください

大腸内視鏡検査を受けることに抵抗があることはわかります。

ただ、便潜血反応陽性であれば大腸内視鏡検査を必ず受けてください。

大腸がんで人生台無しになってしまう人はかなりいます。

残念なことに便潜血検査で陽性と判定された方のうち約3割の方が大腸内視鏡検査を行っていません。

がんを見つける機会を逃してしまうことになります。

がんがなくてもポリープなどの病気が見つかることがあります。

ポリープは将来的に癌になることがあるのでがんの予防として摘出をおすすめします。

当院ではポリープを発見したときに、極端に大きいものを除きその場で摘出しています。

極端に大きくなければ大腸カメラで痛みなく摘出できます。

大腸がんは早期発見できれば日常生活を失わずにすみます。

そのため、便潜血検査で陽性になったかたは大腸内視鏡検査を必ずうけてください。

採血で大腸がん検診はできないのでしょうか

採血検査で大腸がんの検診ができたら便利ですよね。

血液の中にCEA(シーイーエー)という物質があります。

大腸がんの細胞が作るタンパク質で、採血すると測ることができます。

CEAは手術後の転移再発や抗癌剤治療をしたときの治療効果を把握するのにはとても有用です。

しかし、小さな大腸がんの方のCEAはほとんど正常なので、がんの早期発見には不向きです。

人間ドック等でCEA測定が検査項目に組み込まれていることがありますが、値が正常だからといって大腸がんは大丈夫とは言えないことに注意しましょう。

まとめ

大腸がん検診(便潜血反応陽性)をうけ、便潜血反応陽性が出たら精密検査(大腸内視鏡検査)を行うことによって大腸がんで命を危険に晒す危険は確実に下がります。

40歳を過ぎたら大腸がん検診を必ず受けましょう。

筆者 西新井(にしあらい)大腸肛門科 お腹とお尻の専門医・指導医 小泉岐博(こいずみみちひろ)

西新井大腸肛門科

住所:東京都足立区島根3-7-13

TEL:03-3883-2020